経済情報キャッチアップ

毎週月曜日、現役大学生ライターが最新の経済情報をお届け!

大学生みずから気になる経済情報をピックアップ
学生視点で要約・感想を述べています。

記事は添削指導のうえ配信しております。
  • 粕谷 建太
    (明治大学/早稲田渋谷シンガポール高校卒)
  • 塩谷 碧紀
    (上智大学/早稲田渋谷シンガポール高校卒)
  • 橋場 友莉香
    (国際基督教大学/県立横須賀高校卒)
  • 白鳥 一暉
    (上智大学/静岡市立高校卒)
  • 山田 みう
    (上智大学/私立鈴鹿高校卒)

添削指導者

雀部 博之

大学・高校研究会会長

雀部 博之 ささべ ひろゆき

(略歴)
東京・有楽町出身 都立日比谷高校、東京大学工学部物理工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科応用物理学専攻修士課程修了後、工学博士(東京大学)。通産省工業技術院電気試験所(現 産業技術総合研究所)材料部主任研究官、東京農工大学工学部電子工学科助教授を経て、理化学研究所生体高分子物理研究室主任研究員に。千歳科学技術大学光科学部物質光科学教授の後、8年間同大学学長となり大学経営に辣腕を振るう。この間、海外では、米国カトリック大学、米国マサチューセッツ大学、韓国漢陽大学及び光州科学技術研究院、中国北京大学、他の客員教授として長年教鞭をとる。国内では北海道大学、埼玉大学客員教授を兼務する。光科学で日本の第一人者。現在、国立大学法人九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター研究戦略アドバイザー。

表紙

「キャッシュレス」に苦悩の小売り 自社専用プリペイド、じわり浸透 p.19

 政府は2025年にキャッシュレス決済比率を4割にする目標を掲げ、消費増税を機に中小向け補助策も用意した。キャッシュレスは徐々に浸透しそうだが、収益率が高くない小売りにとって決済手数料の負担は大きい。クレジットカードや交通系電子マネーの手数料は通常2-3%とされており、キャッシュレス決済を採用するハードルは高い。
10月の消費増税と併せ、政府は中小企業の店舗が電子マネーやクレジットカードに対応した場合、消費者に配るポイント補助策を用意している。しかし、あくまで対象が中小企業なのでドラッグストア業界8位のクリエイトSDホールディングスには適用されない。増える手数料の抑制策として、同社が8月に導入するのが従来のポイントカードにプリペイド機能を付けた電子マネー「おさいふHippo」。自社の店舗でしか使えず、外部のシステム会社に払う決済手数料率は既存のキャッシュレス手段より低いという。現金をチャージする際、0.5%分の還元ポイントを付けるため、顧客も囲い込めるとみる。
こうした自社専用の決済手段は「ハウス電子マネー」と呼ばれる。システム開発を手掛けるアララ(東京・港)を通じて新たに導入するスーパーは18年の93店舗に対し、19年は200店舗を超える見込み。
「高齢のお客様も使いこなしている」。今月3月にハウス電子マネーを導入したスーパー「食品館アプロ」を運営するカノー(大阪府)の担当者はこう話す。クレジット機能や銀行口座を通さない安心感があり、小銭が不要な利便性が高齢者にも浸透した。レジ前の行列も緩和しているという。
それでも100円ショップなどの薄利多売の商売には手数料の負担が厳しい。キャッシュレス社会の到来を前に小売り各社の苦悩は深まっている。


FRONTLINE バンコク EVシフト奇貨、タイで国産化の動き p.22

 自動車産業の一大拠点であるタイで、初の国産EV(電気自動車)メーカーが誕生した。タイは1960年代から日系を筆頭に、世界の完成車メーカーの投資に頼って成長してきたが、EVを自社開発して完成車市場に打って出ようとする現地企業が初めて現れたのだ。再生エネルギー事業で急成長したエナジーアブソリュート社(EA)は3月に開いた域内最大の自動車展示会、バンコク国際モーターショーで初の国産EV「マインSPA1」を発表。これまでに1000台を超える予約を集めた。さらに、バンコクの複数のタクシー組合が関心を示し、3500台のSPA1を優先供給していくことでも合意している。
EAは最大で1万5000台を生産できる工場をバンコク近郊に建設中で、早ければ年内に稼働する見通し。来年には電気を蓄える「セル」容量換算で1ギガワット時の電池生産能力を持つ工場も完成する。最終的に50ギガワット時の能力まで広げる計画で、複数の大手企業と出資について交渉を進めている。
売上高が低く、知名度やブランド力も劣るEAが海外の巨大メーカーと真正面からぶつかっては勝ち目が薄い。そこで目を付けたのはタクシー業界だ。SPA1に搭載するバッテリーは競合に比べて短時間で充電できるとしており、頻繁な充電が必要なタクシーに適した作りだという。首都圏に1000カ所の充電設備を設置する計画も進め、年内には一般道路で5㎞、高速道路では50㎞ごとに充電できる体制となる。タイ国内生産の強みを生かし、安定して車両を供給できる強みもあるとしている。
日系メーカーにとって、東南アジアは有力な消費市場であると同時に「低コスト生産ができる裏庭」という位置づけだった。しかし近い将来、環境は一変し、既存メーカーと新産者とが顧客を奪い合う熾烈な舞台になるかもしれない。


特集 定番の作り方 ポテチは塩に秘訣あり pp.26-43

 日清カップヌードル、トヨタクラウン、ヤマハSR400のように幅広い顧客から長く愛される「定番」は長期にわたって企業の経営を支える。定番は企業の業績を長年底上げしていたが、生活様式や嗜好の変化、巨大小売業のプライベートブランド(PB)商品の台頭により終売を迎える定番も相次いでいる。終売を迎える定番が多い中、時代を超えて勝ち続ける定番を生み出せれば、ライバルに差をつける強力な武器になる。
定番を分析する際に、時間の経過とともに変わる売上高や利益を指すプロダクトライフサイクル(PLC)に着目する必要がある。PLCは市場に投入する「導入期」、拡大する「成長期」、頭打ちになる「成熟期」、終売に向かう「衰退期」の順に移行する。一般的な商品は衰退期に売上高が減少するが、定番は衰退期を迎えても売上高が減少しない傾向にある。例を挙げると、ポカリスエットとカロリーメイトは高い製品力に裏打ちされたたゆまぬ努力により、40年近く経過しても販売量を維持している。
強い定番があれば経営に有利だが、定番を育成するのは年々難しくなっている。セブンイレブンでは店頭の2900品目のうち、毎週100品目を入れ替えるという。ロングセラーや定番といえども、売れ行きが鈍れば売り場を確保できなくなるのだ。
経済産業省が企業にPLCについて聞いたところ、電気機械産業の34.7%が10年前に比べ「短くなっている」と答え、「長くなっている」と答えた企業は6.4%に過ぎない。全ての産業で「短くなった」が「長くなった」を大幅に上回った。SNSで話題の商品を探す消費者は移り気なので、長く支持される商品を生み、育てるのは難しいといえる。
定番がその地位を維持するには、定番でなくなる危機感を持ち、消費者が求める商品を提供し続けることが大切である。

詳しくはこちら