Common’s Sense

播摩 光寿

モテるために『源氏物語』研究を始めた少年時代

播摩 光寿

日本の古典研究の第一人者であり、大学や予備校、カルチャースクールなどで教鞭をとられている播摩先生にお話を伺いました。話題は、古典の魅力や高校生が古文で高得点を取るコツから、古典を始めとする日本文化の海外への伝え方まで多岐に渡りますが、そのどれもに「こんな見方・考え方があったのか」とハッと気付かされるものがありました。きっと新たな視点で、古典が、日本が、そして世界が見えてきます。

(取材・文/古川紗帆)

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― まずは先生の研究内容について簡単に教えていただけますか。

 日本の古典文学を研究しています。専門にしているのは説話文学。


― 説話文学、と言いますと、例えばどのような作品でしょうか。

 説話文学っていうのは、『今昔物語集』とか、『宇治拾遺物語』などがその代表です。他には『源氏物語』、『平家物語』、『徒然草』などの作品を研究しています。論文で扱っているのは説話文学だけでもありません。古典全般に関して興味があります。私がパーソナリティをしているラジオ番組「播摩光寿の古典の世界」(北海道滝川市のコミュニティFMで月に一度放送中)は、古典についてほぼ60分間喋りっぱなしの番組で、今まで120回くらい、毎回違う古典の話をしています。


― 先生の知識の豊富さが窺えます。古典の世界に魅力を感じたきっかけは何だったのですか?

 古典の文法を好きになったことです。文法って面白いなあと思って文法の基本を理解し、事項を覚えるだけで、古文が自分の力で読めるようになるわけです。そうしているうちに『源氏物語』に出会って、これにすごく惹かれた。私の担任が『源氏物語』を好んでいて、色々な話をしてくれたのですが、その中で「主人公の光源氏はすごくモテる男だったんだ」と教わって。当時モテなかったものですから、「あっ、そうか、モテる男になるためには『源氏物語』を研究すれば良いのか!光源氏がどういう男なのかっていうことが分かれば、きっとモテるに違いない!」と思ったわけです。(笑)


― 播摩少年は、光源氏からモテるためのヒントを得ようと思ったんですね。

 そうそう(笑)それで『源氏物語』のような女流文学の研究会を創ってしまった。でもそうして研究してから分かったんですが、実は光源氏はダメ男で、むしろモテない男の代表なんです。だから結局、私もモテないで青春が終わっちゃった(笑)

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 古典の世界にのめり込んだきっかけが、まさか「モテるため」だったとは驚きました。遠い昔の人が書いた文章の中に、現代や自分の人生に通じる部分を見出せることは、古典の面白さであり大きな魅力のひとつであると感じました。