Common’s Sense
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ご自身の研究について~光ファイバー~
雀部 博之
前回までは、さまざまな光の種類やその構造についてお話を伺ってきました。
ところで皆さん、「光ファイバー」ってご存知ですか?私も聞いたことはあるのですが、どんなものなのか正直わかりません。
今回は、先生のご専門分野のひとつでもある、この「光ファイバー」についてお聞きしました。
(取材・文/小嶋和)
― 先生は光ファイバーの研究にも取り組んでおられると伺いましたが、光ファイバーとは何でしょうか?
光ファイバーとは、光を細いガラス繊維(ファイバー)の中に閉じ込め、伝送するものです。光は真空中では直進しますが、屈折率の異なる物質の界面では入射される角度に依存して反射や屈折をします。ある角度よりも大きな入射角になると光は全て反射されます(全反射という)。ファイバーの中に導かれた光は全反射を繰り返し、外に出ることなくファイバー中を伝わっていきます。従って光を好きなところに自由自在に届けることが可能となります。
たとえば通常の電話は電気信号でやりとりしているのを知っていますか?第1回でお話ししたように、音は縦波です。「もしもし」と話したとすると、この「もしもし」という音の縦波をマイクロフォンでキャッチして、電気信号(デジタル化)に変えます。その電気信号を相手まで届け、スピーカーで電気信号を「もしもし」という音に変えて相手に伝えているのです。このやりとりをさらに高速化しようとしたとき、光が登場します。声をデジタル信号に変換するまでは同じですが、その信号を運ぶのに電気ではなく光を用いるのです。光は電気信号よりもスピードが速い(振動数が大きい)ので、一度に伝送する信号量が電気の百万倍にもなります。そのため、光で通信したほうが効率的なのです。
― なるほど。光での通信と聞くと、インターネットが思い浮かびます。
そうですね、インターネットの高速化に光ファイバーも貢献しています。古くはダイヤルアップ回線、ISDN回線、ADSL回線といった接続方法がありましたが、これらはすべて電話回線を使用=電気信号で通信していました。一方、今主流なのは光回線ですよね。その名の通り、光を使って通信しているので昔とは桁違いに通信速度が速くなりました(一度に送れる情報量が多くなりました)。今では世界中の海底に光ファイバーケーブルが敷き詰められています。それによって、快適なインターネット環境を享受できているわけです。