Common’s Sense

川尻 恵理子

法律一歩二歩 ~法律家になりたい人へ〜

川尻 恵理子

これまでは、国外も含め、法律や法曹界の基本について伺ってきました。それでは実際に法律家になるにはどうしたら良いでしょうか。

(取材・文/小川奈津実)

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― 法律家になるために、必要な心構えなどはありますか。

 まず試験についてだけ言えば、試験はもう受かるしかないですから、受かることに特化してください。これがコツです(笑)。判例・通説を暗記する。私はここを誤解してしまったので、大変でした(笑)。私はこう考える、と自分の意見や研究結果を書いていたのです。でも試験は「正解」がある世界です。要するに判例・通説を書けば良い。いずれにせよ、判例・通説を覚えることで、法律家として重要な基礎となる土台を作ることになります。こう考えればベストの説になるのではないか、という「私の説」を作るのは、受かってからにしましょう(笑)。
 受かった後の実務の世界は、今度は暗記をする世界ではありません。自分の頭で考える世界です。明確な「正解」はどこにも書いてありませんから、常識に沿って、自分の頭で考えることが大切です。


― では資質の面で。法律家にはどのような人が向いていますか。

 法曹の仕事をしていて、人助けは楽しいです。誰かの力になれるのは嬉しいし、逆にこちらがパワーをもらえます。そういったことにやりがいを感じられる人に、法曹界に入ってほしいですね。また、法律家はある意味で自由です。というのも、自分に割り当てられたケースをどのように進めるかを、自分の判断で行えるからです。もちろん責任はあります。しかし、言われた通りにやるのではなく、自分で考えたことに沿って動きたい人――自分の力を自由に発揮したい人に向いていると思います。


― 川尻先生はなぜ法律家を目指されたのですか。

 私の場合は勘違いだから、あまり参考にならないと思いますよ(笑)。私は、本当は探偵になりたかったので(笑)。子どもの頃から推理小説が大好きでした。ただ、小説の中に出てくる探偵は、昔のイギリスなどに住んでいますから、探偵は昔の職業で、今はもう存在しないものだと思っていたのです。そうしたところ、『弁護士ペリー・メイスン』というドラマを見て、弁護士が鮮やかに事件を解決する姿に胸をうたれ、今の時代では探偵って弁護士なんだ!と思ったのです。偉大なる勘違い。それでなろうと思いました(笑)。

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試験を通して覚えた知識を基に、自主的に考え行動する。法律家は、それが得意な人にうってつけの職業だと分かりました。人助けにも繋がるという点も良いですね。また、川尻先生が意外にも、勘違いから法曹界へ入ったというお話は面白かったです。