Common’s Sense
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法律一歩二歩 ~法の世界の海外への道〜
川尻 恵理子
ここ数十年、周知の通り、各界でグローバル化が進んできました。それは法律の世界でも同様なのでしょうか。そこで、今回は法律の世界について、「国外」の切り口から、川尻先生にお話を伺いました。
(取材・文/小川奈津実)
― 法曹界でも、グローバル化の波を感じることはありますか。
ありますね。今は小さな企業でも、商品の仕入れ先に海外が含まれていることが多いです。また、インターネットは基本的に世界中からアクセス可能ですから、接続制限をしていないサイトやページを持っていること自体、実はグローバルなのですよ。
そもそも、法律は国によってバラバラです。それぞれの社会(文化、風土、気質、考え方)に根差したものですから、国によって常識=法律は少しずつ異なります。しかし、それでは困ることもあります。売買契約などは、各国で共通のルールがあった方が良いですよね。他には家族の問題でも、一部国際的なルールがあります。
例えば、いわゆる子奪取条約。これは、国をまたいで片方の親が子どもを連れ去り、残された親が簡単には子どもと会えなくなってしまった場合に、どうするかを定めたものです。このように、一国では解決できない問題は、複数の国が話し合いを重ねて、その問題を解決するための共通ルールを作ります。これが条約ですが、その意味では、日本で暮らしていても、一部は共通化したグローバルなルールが常に存在していると言えるのです。
― 川尻先生は留学のご経験もあると伺いましたが、その点についてはいかがですか。
法曹に限らず、皆さん外国には行った方が良いと思います。視野が広がりますから。いろんな考え方の人がいると分かるだけでも収穫になりますし、それまで何も疑問に思わなかったことにも、気が付くことができます。特に、ある程度の期間はその国に住んだ方が良いですね。
実は、法律家にはけっこう海外への道が開かれています。裁判官または検察官には、一年または二年の留学制度があって、応募して海外の大学や研究機関に行くことができます。また、弁護士も含めて、海外のロースクールへ留学に行く人も少なくないです。それにしても、法律はドメスティックなものなのに、海外で勉強する道が広く開かれているというのは、面白いですよね。
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基本は国ごとでバラバラな法律も、国際的な問題に対応して、共通のルールが作られている。それが現在の法曹界のグローバルな面だ、ということがよく分かりました。また法曹に限らず、留学した方が良いというお話は、私自身にとっても参考になりました。